症状が出る様々なきっかけ


Q.うつ病は、こころの病気ではないのですか?

A.うつ病になると、「気がめいる」「ゆううつ」などと精神面に影響を及ぼします。
そういったことから、こころの病気と捉えても間違いではありません。
しかし、実際には脳を構成する無数の神経伝達物質のうちの、「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減少することから、脳の情報伝達にトラブルが起こる病気、という捉え方もできます。

【30代女性の場合】

A子さんに転機が訪れたのは32歳のときでした。
関西で保育士として忙しい毎日を送ってきた彼女に、夫の仕事の都合で突然、北海道への引越しが決まったのです。
見知らぬ土地での生活に不安はあったもののすぐに再就職も決まり、心機一転、新しい土地での生活がスタートしたのでした。

そんなA子さんの異変に夫が気づいたのは、引越してから半年ほど経ったころ。夫が出張から帰宅すると、電気のついていない部屋にA子さんが呆然と座っていたのです。髪も乱れ、服装は寝間着のままでした。

話を聞くと、夫が出張中の2日間、仕事を休んでしまったそうです。元来まじめで頑張りやのA子さん、積極的に「前の保育園のやり方はこうだった」と提案を続けたため、周りの保育士から敬遠されていると感じ、悩んでいたのでした。

また同じマンションに住む子連れの母親を見つけては積極的に話しかけ、保育士としてアドバイスをしていたところ、いつの間にか母親達から無視されていると感じるようになっていました。夫が「方言のせいで、言い方がきつく受け止められるのでは?」となぐさめたものの、おしゃべりなA子さんにとって更にショックなひとことでした。

その後、厳しい冬のシーズンを迎え、ますます彼女の気分はおちこみました。夜、寝つけなくなって昼間は頭痛がひどくなり、職場を退職。好きだった家事もいっさい手がつけられなくなり、1日中布団から抜け出せない日々が続きました。

見かねた夫がA子さんを連れて精神科を受診。現在は薬による治療とカウンセリングを受けながら、少しずつ生活のリズムをとりもどす日々になってきています。 春になって夫は、A子さんの体調の落ち着いているときを見計らって外に連れ出すようになりました。A子さんにとって最初は「見知らぬ土地」だった北海道。徐々に愛着を感じるようになり、気分も安定しつつあります。

【40代会社員の場合】

心身が極度に疲労し、まるで燃え尽きたような状態になってうつ病を発症する人が中高年の男性に増えています。

Kさんは北陸地方の中堅メーカーに勤めるサラリーマン。
営業一筋で20年近く、北陸の地で勤務を続けてきました。責任感が強く、典型的な会社人間だったKさんは同僚より一足先に支店長に昇進するなど、順風満帆な人生を送っていたのです。

転機が訪れたのは、突然外資系企業との合併話が舞い込んだときでした。合併後の本社はこれまでの北陸地方から関西地方へ。Kさんは営業職から合併後の本社配属となり、多くの同僚と同じように単身赴任を余儀なくされる羽目に。

合併によるぎくしゃくした人間関係の中、管理部門グループの一員としてこれまで経験したことのない業務に失敗を重ね、誰にも相談できないまま深夜残業を続ける日々。おまけに英語がまったくできないKさんが、今まで経験したことのない英語での資料作成や会議でのプレゼンなどをこなすには、いくら時間があっても足らないような状況に追い詰められてしまったのでした。
体力は限界。しかし布団に入って寝ようとしても強い動悸や冷や汗、夜中に数回起こる尿意などでほとんど眠れず、ある朝から突然、無断欠勤を重ねるように。

心配した会社側から産業医との面談を勧められ、産業医のアドバイスでしばらくの休職と同時に心療内科への通院がスタート。心配した家族も定期的に関西の単身赴任宅を訪れるようになり、Kさんも徐々に安定した睡眠が得られるようになっていきました。
会社側とは休職中も定期的に話し合いを行い、その結果、勤務地は関西と変わらないものの、本社の管理部門から営業職への配置転換が認められ、心身ともに燃え尽きていたKさんの胸の内に「また、お客さんの顔が見たい」「商品を売ってみたい」という思いがじわじわと沸きあがってきたのです。

管理部門での仕事ができないのは自分が無力だからと自分を責め続けていたKさんですが、「自分には営業の仕事が天職なんだ」と前向きに考えられるようになるなどの変化もあらわれています。