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【最先端】AIを使えば、かなりの精度で自殺を予測できる


[NewsWeek 2017.7]

アメリカで毎年、自殺で亡くなる人は4万2000人以上。
99年~14年で、自殺率は24%増加している。

長年のデータや学説の積み重ねでわれわれは自殺の防止法、少なくとも予測法を理解しつつあると思いたいが、最新研究によれば自殺予測の科学はほとんど成果がない。

よく言われる自殺の兆候も、茶葉占い程度にしか当てにならない。

でも希望はある。

AIによる機械学習のアルゴリズムが自殺予測の精度を劇的に向上させることが分かったのだ。

アメリカ心理学会の「心理学紀要」2月号に掲載されたその研究は、遺伝子や精神疾患、虐待など3428の危険因子を扱っている過去50年の論文365本をメタ分析(複数の研究の分析結果の分析)。
自殺願望や自殺を予測する上で、1つの危険因子が臨床的に有意であることはない、との結論が出た。

鬱状態の人は自殺する可能性が高いことを考えれば、驚くべき結果かもしれない。

だが留意すべき点がある。

第1に、これらは予測的研究であること。
研究期間は平均約10年で、いま鬱病の人が今後10年のうちに自殺する可能性が高いかどうかという話だ。

第2に、臨床的な有意性は統計的な有意性と同じではない。
つまり自殺と危険因子の相関関係は数字的には信頼できるが、それに基づいて行動するには弱過ぎる。

 

 

難点は治療にどう生かせるか

医師なら、近日中の自殺につながるような自殺願望を予測したいだろうが、それに関する研究はない。

自殺のリスクが高い人を大勢集めなければならないからだ。

しかも失業などの危険因子を特定し、多くの人が1週間以内に自殺を試みるという前提条件が必要。

そうすれば自殺を試みた人がその週に失業した確率が高いかどうか調べられる。

 

「これまでこうした研究がないことを多くの研究者が認識していなかった」

と、論文の共同執筆者でフロリダ州立大学の心理学者、ジェシカ・リベイロは言う。

彼女たちの研究で、自殺の予兆となる要因を特定する能力が向上していないことも判明した

自殺は多くの変数が絡み合った複雑なものだ。

そこで研究者らが提案するのが、数々の危険因子から有用なパターンを見つけるAIのアルゴリズムの開発

クリニカル・サイコロジカル・サイエンス誌に最近掲載された論文は、その将来性を示している。

バンダービルト大学医療センターのコリン・ウォルシュ助教はリベイロらと共に、自殺未遂や自傷行為で入院した患者3250人と、自殺未遂の経験がない患者1万2695人の電子カルテを比較。

人種や年齢、薬の服用、既往症など診察で得られるデータに限定してコンピューターに機械学習させ、1週~2年間の期間で自殺を予測できそうなパターンを見つけ出させた。

するとAIアルゴリズムの予測精度は「2年以内に自殺を試みる可能性」で86%、「1週間以内」では92%に達した
ちなみに、リベイロらがメタ分析した各種要因の精度は約58%だ。

 

難しいのはこれを治療にどう生かすかだ。

データの共有法や、自殺の危険性を誰に知らせるかという問題がある。

自分の勘より機械を信じるよう、医師たちを納得させるのも大変だ。

ウォルシュが考えるのは、コンピューターの助言を参考にして医師が判断する「ハイブリッド」な方法。

反対に、人間の判断がコンピューターに入力するデータになると想定する専門家もいる。

自殺は家族や周囲の人々を打ちのめす悲劇。
アルゴリズム利用の課題は多いが、ひるまずに自殺増加に歯止めをかける努力を続けるべきだ。