うつの罹患率や過労死の数について統計をとると、男女で大きな差が出ることがわかっています。
うつ病では、女性の罹患率は男性の2倍。
過労で死ぬのは男性がほとんどです。
では、どうして女性のほうが男性よりうつ病になりやすいのでしょうか。
まず、脳科学的な理由が挙げられます。
「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌の減少が、うつを引き起こす直接の原因となります。
エストロゲンは、人の感情、気持ちを高める「セロトニン」という脳内物質に作用するホルモンなのです。
つまり、生理や妊娠、閉経などでエストロゲンが減少すると、セロトニンも減少し、抑うつ的な気持ちを引き起こしてしまうのです。
男性はうつが少ないというわけではない
一方で、「男性のうつ病が少ない」のには、とある事情があります。
というのも、男性はうつ病になっても病院を受診しない人が多いのです。
女性は、男性に比べると共感力が高い傾向があり、すぐ友人や家族に相談できる話好きな人が多い。
そのため、病院にもかかりやすいのです。
対して、男性は精神的な負荷を感じていても「もっと頑張らなければ」という意識を抱えてしまいがち。
仕事が生きる目的になっている働き盛りの年齢のビジネスマンなら「もっと働かないと」と思ってしまい、なおさらです。
そうして、苦しくても病院に行かずに済ましてしまうのです。
つまり、男性はうつが少ないというよりも、「うつと診断される人が少ない」と言えるのです。
さらに、そうして誰にも相談できないままストレスフルな生活を続け、病院を訪れたときには重篤な状態になっていることもとても多い。
過労死するまで働き続けてしまうというわけです。
これが男性に過労死が多い理由です。
上司に詰問された日に何杯飲むか
見過ごされやすいのが、アルコール依存症の問題です。
WHO(世界保健機関)の調査では、自殺者の50~ 80%がうつなど感情障害であり、20~60%が何らかの依存症だとわかっています。
この依存症とは、アメリカでは薬物依存であり、日本ではアルコール依存です。
自殺している人の3分の1が、自殺前に飲酒をしているというデータもあります。
自殺リスクは、1日3合以上の飲酒で2倍、重度のアルコール依存症の場合は8倍にもなります。
このアルコール依存症の割合は、男性5:女性1。
男性は精神的に追い詰められたとき、よりアルコールに逃げやすい。
仕事で悩み、アルコールに逃げて最後には自殺を選ぶ──男性の過労死の1つの典型と言えます。
そして、アルコール依存症で病院に通う人はごく稀にもかかわらず、日本人男性の罹患率は、定められた診断基準だと7.4%にも上ります。
1カ月に飲まない日がない。
飲んでいるときに、苦しいから死んでしまいたいと思う。
そんな人は特に要注意です。
上司に詰問されたその日に1杯だけ飲むならまだいいですが、楽しく飲めないお酒は精神的に逆効果。
ストレス発散に効果があるとわかっているのは、とにかくしっかりとした睡眠です。
辛いときは酒を飲んで愚痴を言うよりも、暖かい布団でぐっすり寝ることが大事です。